カチ持ち神話を考え直す|クライミング・ボルダリング




クライミングを初めて1〜2年、1級や初段の課題を定期的に落とすことができるようになってきた中級クライマーのみなさん(私を含む)は、おそらく多くの場面で「カチ持ち」を使っているだろう。そして、「カチ持ちが出来れば、だいたい体を引き上げられる」と考えていないだろうか?




「続)カチ持ち神話を考え直す2」はこちら

私もそう考えていたし、多くの課題を「カチ持ち」で完登していた。時には、スローパー上で「カチ持ち」することさえあった。そして、指の筋肉/腱が発達してきたと勘違いしていた。

しかし、より難度の高い課題に取り掛かった時、私は自分のあまりの指の弱さを知り、愕然とさせられた。オーバーハングで薄いホールドを持とうとしても、指の筋力が全然足りないのである。私の中で「カチ持ち神話」は脆くも崩れ去った...


多くの先人クライマーたちの動画を見ていると、「カチ持ち」よりもむしろ「オープン」で登っている人が多い。ただ、それは単なる「オープン」ではなく、親指を「オープン」したホールドの下から押さえつける「極度に薄いピンチ」なのである

「カチ持ち」するような薄いホールドを、あえてオープン気味の「ピンチ」でつまむことにより、様々な角度での保持が可能なのである。(カチ持ちの場合、肩あたりまでなら上体をあげられるが、それ以上にあげてしまうと外れてしまう)

薄いホールドでできたオーバーハング課題を、カチ持ちだけで登ることは非常に難しい(もちろん課題の種類によるが)。しかし、極度に薄いピンチ、「極薄ピンチ」を使うことにより、だいたい胸あたりまで上体をあげることが可能になる。(一応ピンチしているので、親指がホールドに効いてくれる)この持ち方を専門的には、ハーフクリンプ、セミアーケと呼ぶ。

クライミングを始めた当初、先輩たちからまず「カチ持ち」を教えられた。それは「この持ち方さえマスターすれば、指筋がなくてもある程度の課題まで登れる」というもので、「カチ持ち」によって、弱い筋力をカバーしていたとも言える。

また「カチ持ち」によって、指の腱を痛めるケガを予防するという人もいるが、個人的には「カチ持ち」が腱を痛める原因となることが多いように思う。というのも、オープンで持っている限り、腱を痛めるほどの力を指にいれることは難しいからだ。むしろ「カチ持ち」の力に頼り、無理やり上体をあげたときに「カチ持ち」が外れてしまい腱を痛めたり、「カチ持ち」を多用しているクライマーが、指ポケット課題に挑んだときに痛めるケースが多いように思う。

「カチ持ち」に頼りすぎず、意識的にオープン、ハーフクリンプを鍛えることにより、真の指筋を鍛え、指ポケットやより高難度の課題も安定して登れるようになるのではないだろうか。(もちろん、カチ持ちも重要な技術)


効果的なトレーニング方法は、キャンパスボードにオープンハンドで掴まり、そこから徐々にカチ持ちに切り替えてゆくという地味なトレーニング。しかしながら、瞬発力、引きつけ力とも違う、真の保持力の向上に非常に効果的。是非一度お試しあれ。

カチ持ち神話を捨て、今一度フィンガーボードに向かおう。

「続)カチ持ち神話を考え直す2」はこちら