登る哲学者:フレッド・ニコル



どこか哲学者か詩人のような出で立ち。

皆さんは、スイス出身のクライマー:フレッド・ニコル師をご存知だろうか?




私は彼のクライミングスタイルが非常に好きである。

それは、彼の登り方だけでなく、彼のクライマーとしてのライフスタイル、クライミング哲学が好きなのである。今回は、岩道をゆく先人の一人、フレッド・ニコルを紹介したい。

彼はこういう、



クライミングは僕の人生にとって、とても重要なものだけど、  僕はただのクライマーであって、プロクライマーではないよ。 もし誰かが、僕に何をしてるのか?って聞いてきたら、 たいていクライマーだって答えるけどね。。。


クライミングってのは、人間によって決められたものではなくて、自然に与えられたものなんだ、だから素晴らしいんだよ。地球上にある岩の数だけ、可能性があるんだ。




prAnaによるフレッド・ニコルのドキュメント"My Own Way"




現在の落ち着いた出で立ちとは変わり、若かりしころの彼は、
今よりも少しばかり尖っている(そしてだいぶ痩せている)それもそう、彼こそが1996年スイスで世界初のV14(8B+) Radjaの初登者だからである。また有名なDream Time(初登時V15, V14 にダウングレード)の初登者でもある。

若かりしころのフレッド・ニコルの動画。Radja/8B+(現在は8Bにダウングレード)の映像は13:30ころより。とにかく腰の入った安定したムーブがかっこいい。そして、ほとんどの課題が薄いクラッシュパッド1枚で登られているのにも注目してもらいたい。ランディングが良いとは言え、まるでジムのように敷き詰められた現在の状況とは全く違う。あくまでもしっかりとスポッターが落下を支えられる位置で待機していて、その着地点としてのみ用意されている。こういったクライミングスタイルが、驚異的な保持力を作り上げているのだろう。





彼は当時のことを振り返り、こう言う。



当時はまだあんまりクライミングが知られていなかったんだ。ちょっと不思議に聞こえるかもしれないけれども、難しい課題を登ることが僕のクライミングのゴールになることは決してなかったただ、何か新しい物を求めて旅をしている、その途中にあっただけなんだ。ボルダリングを見つけられたのは良かった。恐怖を感じる必要がないから、岩と自分とムーブを考えるだけでいい。

prAnaによるフレッド・ニコルのドキュメント"Deeper"





彼のクライミングに対する哲学を知ると、Dream Timeという課題名もなんだか違って見えてくる。。。彼は、そのときの彼自身をクライマー人生における「夢の時期」と捉えていたのか、あるいは、クライミングできる時間こそが「夢のような時間」ということなのだろうか?


クライミングは自然を理解するとても良い方法です 。クライミングを通して自然に感謝する方法を学びました。


私にとって、フレッド・ニコルはクライマーである以前に

自然哲学の探求者である。それは、彼の背中が物語っている。


クライミングのオリンピックの正式種目化が話題の今、
人間におけるクライミングの本来の意味とはなんなのか
今一度考え直す機会が欲しい。