忍術のすすめ|忍者返し攻略のヒント?!クライミング・ボルダリング


北斎漫画」より

「なんでクライミングやっている?」と聞かれたら、みなさんはなんと答えるだろうか?それはもう「楽しいから」に決まっているのだが、私にとってはもう一つの理由、隠れた「男の浪漫」がある。それはまさしく「忍者になりたいから」だ。子供のころからの憧れ「忍者」の姿にクライマーの姿を重ね合わせているのである。いい大人になってこんなこと大声では言えないが、まだまだ「忍者になりたい」夢を追いかけて、その修練の一つとしてクライミングをしているのである。



性クライマーに限らず女性クライマーも、実はそんな憧れを抱いている人、多いのではないだろうか中二病?)。「忍者返し/1級」を攻略するためにも、今こそ「忍術」を学ぶ必要があるということで、忍者、忍術に関して少し調べてみたいと思う。

その前に、少しおさらいをしたいと思う。先の記事「クライミングは現代の修験道か」で触れたように、修験道と忍術には密接な関わりがある。修験道の開祖は役行者(えんのぎょうじゃ)とされており、忍者の里、伊賀の街には数多くの役行者像が祀られていると言われている。また、修験者が用いる九字護身法を忍者も使うため、修験道は忍術のルーツなのではないかと言われている。白装束をまとった昼の顔が修験者であるとすれば、黒ずくめの忍者は夜の顔といった感じだろうか?忍者の変装の定番は修験者・山伏(やまぶし)とも言われている。この2つの繋がりはどうも奥が深そうだ。

聖徳太子が志能便(しのび)として活動させていた大伴細人(おおとものほそひと)が日本最古の忍者/しのびであると言われており、歴史上で有名な忍者は、加藤段蔵、雑賀孫一、猿飛佐助、山本勘助など。現在、最後の忍者と呼ばれているのは川上仁一­さん。が、あなたの周りにも隠れた忍者は存在するかもしれない。あのクライマーも実は。なんてこともあり得る。

忍者・忍術は、大名領主に仕え、または独立して諜報活動破壊活動浸透戦術・暗などを仕事としていた個人ないし集団のことを指す。読んで字のごとく、「忍/しのび」の術、またの名を隠身術(いんしんじゅつ)ともいう。剣、鎌、手裏剣などを使用した武術からスパイのような諜報活動、はては人間離れした妖術や呪術までも使用したと言われている。日本全土に四十九流派も存在したと言われており、全ての流派の基本とし忍者八門というのがある。「骨法術」「気合術」「剣術」「槍術」「手裏剣術」「火術」「遊芸」「教門」である。さまざまな映画に派手に戦う忍者が出てくるが、基本的に本来の忍術とは隠身術と呼ばれるだけあり「身を隠す術」である。いかに誰にも気付かれることなく城に忍び込み、情報を盗み出し、風のように逃げるかが重要なのである。

忍者は自らの姿を隠す術として様々な物体を使用した。それらは総じて「遁術(とんじゅつ)」と呼ばれ、「即席活用忍術気合術秘伝」には以下18の方法が書かれている。みなさんも一度は耳にしたことのある響きではないだろうか。



  1. 遁の術(もくとん/木によって形を隠す法を云ふ。草によって隠す場合も同様である)
  2. 火遁の術(かとん/一閃。火でも得ればスグそれを利用して形を隠す場合)
  3. 遁の術(どとん/土によって形を隠す場合)
  4. 遁の術(きんとん/金属を利用して形を隠す場合)
  5. 遁の術(すいとん/少しの水でもあればそれを利用して形を隠すもの)
  6. 遁の術(にんとん/人によって形を隠すもの)
  7. 遁の術(きんとん/鳥によりて形を隠す場合)
  8. 遁の術(じゅうとん/獣によりて形を隠すもの)
  9. 遁の術(ぎょとん/魚を利用して形を隠すもの)
  10. 遁の術(ちゅうとん/蟲を利用して形を隠すもの)
  11. 遁の術(じっとん/日を利用して形を隠すもの)
  12. 遁の術(げつとん/月を利用して形を隠すもの)
  13. 遁の術(せいとん/星によって形を隠すもの)
  14. 遁の術(うんとん/雲によって形を隠すもの)
  15. 遁の術(むとん/霧によって形を隠すもの)
  16. 遁の術(らいとん/雷によって形を隠すもの)
  17. 遁の術(でんとん/電・いなずまによって形を隠すもの)
  18. 遁の術(ふうとん/風によってを形を隠すもの)


風よりも早く走り、鳥のように高く跳ぶといわれた忍者、その諜報活動にはさまざまな潜入用忍具が使われた。忍者の七つ道具と呼ばれるのは、編笠(あみがさ)、三尺手拭(さんじゃくぬぐい)、鉤縄(かぎなわ)、石筆(せきひつ/蝋石で出来た筆)、薬、付竹(つけだけ/発火用具)、錣(しころ/楕円形ノコギリ)。その他にも忍刀(しのびがたな)、縄梯子、手甲鉤(てっこうかぎ)、苦無(くない)、撒菱(まきびし)、五色米(ごしきまい)などがある。ここでは特に、忍者のクライミング道具に関して書いて行きたい。

鉤縄(かぎなわ)は忍者の七つ道具のひとつとしても知られる代表的なもの。縄の先に鉄鉤がついた道具で、足がかりのない壁や崖、谷や橋のない川を渡るのに使われた。いわば、現代のザイルのようなものだ。

忍刀(しのびがたな)は基本的には刀としての役割を持つが、ツバを足がかりにして塀などを乗り越えるのに使用されたとも言われている。長いひも(下げ緒)がサヤについており、塀を越えた後に刀を回収することもできる。


縄梯子(なわばしご)はその名の通り、縄で出来た梯子である。携帯性に優れ、高所の上り下りに使われた。想像以上にバランスが悪く、登るのには少しコツが要る。たまに天井から縄梯子が下がっているクライミングジムを見かけるが、体幹と筋トレにはもってこいのアイテムだ。

手甲鉤(てっこうかぎ)は手の甲に装着する鉄製の熊手のようなもので、主に暗殺に使用されたと言われている。また、石垣や木肌に爪をひっかけ登るのにも使われたと言われている。形状は違うが、いわばアイスクライミングで使われるアイスバイルのようなものだ。

苦無(くない)は、さまざまな用途を持つ道具で、スコップやナイフ、そして時には壁を登る時の足場としても使われた。いわばハーケン、アイススクリューのような道具である。

これだけ見ても、いかに忍者が現代のクライミングに通じるような道具を持ち合わせ、そして使用してきたかがよく分かる。ヒールフック、トーフック、ドロップニーだって使っていたかもしれない。もちろん、忍者にとってマントル返しなんて朝飯前だろう。


「武者返し」で有名な熊本城

ところで、日本のボルダリング1級クラシック課題にもなっている御岳「忍者返し」の名前の由来とは何だろうか?それは、さまざまなお城に設けられた、忍者対策の構造体「忍者返し」を指す。時には急勾配の石垣(武者返しとも呼ぶ)を指し、時には塀の上に取り付けられた鉄槍、梁のことを指す。いずれにしても垂壁から少し飛び出たルーフ(本当の屋根!)を攻略する必要があり、城に忍び込むのはなかなか難しそうである。。。御岳「忍者返し」はかぶっていなくてよかった。

ということで、ここまで忍術の概要と忍者の道具に関してまとめてみたが、これが果たして「忍者返し」攻略ヒントになるかと言われるとはなはだ疑問である(笑。が、「忍者返し」と名付けられた以上、忍術なしでの攻略は不可能だろう。忍術とクライミングの接点を考えることにより、少なからず、クライミングを古武道、あるいは文化的な側面から捉えることは出来たのではないだろうか。ぜひ皆さんの「忍者返し」健闘を祈ります。心に刃をしのばせて。。。

忍術のクライミング技術への応用「フットワーク」「九字護身法」「氣合術」についても今後書いていきますので、ぜひご覧ください。


「忍法、岩遁の術!」ドロンっ。。。


関連記事

「印を切って指筋を鍛える|忍術:九字護身法」