岩の下にも3年、ボルダリングの仙人:小山田 大氏



やはり、彼のことを語らずしてクライミングのことは語れない。世界で最も沢山の高難度ボルダー課題を初登しているクライマー:小山田 大(こやまだ だい)氏。かつてはコンペなどへの出場も見られたが、近年はもっぱら外岩の開拓(特にボルダリング)に勤しんでいる。この方のことを知らないクライマーは殆ど居ないのではないだろうか。日本のみならず、世界的に知られた超有名、超一流クライマーである。近年では、比叡における開拓と「ホライゾン/V15」の初登を果たしている。


その生い立ちがまず面白い。1976年鹿児島県生まれ、15歳でクライミングを始める。しかし、ジムでクライミングを始めたのではなく、家の近くの岩場で「岩登り」をしたのが始まりだという。当時はクライミングジムというのも普及しておらず、小山田氏は、自らホールドのようなものを見様見真似で作り(コンクリートや河原石で!?)、実家の納屋の中に特設のトレーニングウォールを作って登っていたのだという。要するに、本当に独学でクライミング(岩登り)を始めたのだ。クライミングジムの普及した現代では、こう言った経験を通してクライミングを始めることはなかなか無いかもしれない。まさに、外岩が生んだ外岩クライマーである。



岩を見つめ「時」が来るのを待っている、その出立は、まさに山籠りしている仙人のよう(悪い意味ではなく、敬意を表して)。小柄な体格で世界の高難度課題に挑んでいる姿、独特のフットワーク、そしてバシッと決まった体幹、尋常じゃないほど太い指。とにかく美しく、キレのある登りが見ているものを魅了する。どこかフレッド・ニコルを彷彿させるような柔らかな物腰も、外岩を攻めるクライマーならではのものだろう。

かつて、NHKの番組に出演していた小山田大氏は、「なぜ岩を登るのか?」という質問に、「この年にもなって岩を登っているのは恥ずかしいんですよ」と答えていたのが印象的だった。それは、まさしく「楽しくてやめられないんですよ」という言葉の照れ隠し、まるで少年のような、とても素直な返答だった。この言葉は、どこかでずっと私の頭の中をコダマしている。そんな印象的な返答だった。






小山田氏の名前を世界に知らしめたのは、2004年5月オーストラリア・グランピアンズにおける「The Wheel of Life/V15」の初登だろう。全長30m、約60〜80手にも及ぶオーバーハング課題
は、ボルダリングやクライミングという枠を越え、見る者、登る者を圧倒する魅力がある。そして、彼の課題にはいつもとてもカッコイイ名前が付いている。日本で言えば、「白道/V15」「ハイドランジア/V15」「バベル/V15/16」「天照~アマテラス~/V14」そして先日、白石阿島さんが第二登した「ホライゾン/V15」など。「The Wheel of Life/V15」は直訳すれば「輪廻」。仏教、ヒンドゥー教、ジャイナ教などに見られる「人間が何度も転生し、さまざな生物に生まれ変わること」を表す言葉だ。全長30mの中で何度も見られる回転ムーブから来ているのかもしれないが、どこか宗教観、自然感を表す
とても良い名前だ。一度で良いから触れてみたくなってしまう。

ご本人の初登動画はDVD「Wheel of Life」で是非!めちゃくちゃカッコイイです。クリス・ウェブパーソンによる第二登のビデオは下記。



そして、2012年に初登したスイス・クレシアーノ「Story of two worlds low start/V16」。これは、デイブ・グラハムによって初登された「Story of two worlds/V15」をより下部から始めた課題である。小山田氏はこの課題を2010年に第二登している。しかし、スタートホールド位置が微妙に違ったということで、いつくかのメディアによって指摘された。そのため、小山田氏は翌年に再びクレシアーノを訪れたが天候に恵まれず、再登にはならなかった。さらに翌年の2012年クレシアーノを訪れ、「スタート位置が違ったなら、いっその事、より岩の形に沿った自然なスタート位置、より下部からのスタート」でトライし、見事初登したのである。まさに3年ごしのプロジェクト。岩の上にも、岩の下にも3年である。その心意気がカッコイイ。登りきる前に男泣きしてしまう小山田氏にもらい泣きしてしまうのは私だけだろうか?




ということで、ボルダリングの仙人:小山田大氏をご紹介させていただきました。まだまだ語りつくせませんが、超現役の小山田氏、これからも新たな初登が見られることを楽しみにしています!!そして、近日イボルブから発売予定の新シューズ:アグロ(小山田大モデル)も楽しみです。こちらに関してはまた別記事でご紹介できれば。

下記はご本人のブログです。外岩での日記が事細かに書いてあってとっても面白いですよ
http://koyamada.dai.hiho.jp/