本当に強いクライマーとは何なのか?一位ではなく、唯一になる事。



昨今の日本各所で起こっているチッピング問題が気になり、岩道なりに色々と考えました。その結果、やはり現在のクライミング界の「人と競い合わせるクライミング」という潮流が、チッピング犯を多く作り出す、その根底にあるのではないかと思いました。

確かに、クライミング界のトップアスリートは「人類の限界」に挑戦しているのだから、時に「人と競い合う」必要があると思います。しかし、クライミングの本質は「岩との対話+戦い」にあるのです。クライミングは岩場から始まったのです、ジムやコンペから始まったわけではありません。




「人と競い合わせるクライミング」の潮流は、おそらくオリンピック後にはさらに拍車がかかることでしょう。これは、ずっと前から続けている多くの中年クライマーにとって悩ましいことです。そのうち、「不可能スラブを何秒以内で登った」とかいうクライマーも現れてくるかもしれません...


岩をチッピングをした時点で「あなたの負け」。
ただ、それだけです。
もう一生、その岩に勝つ事は出来ません。


チッピング犯は、やはり「人と自分を比べて登っている」のだと思います。確かに、どこのジムに行ってもセッションのフリをして「競ってくる」クライマーは沢山います。あたかも「自分はこの課題を登れたけど、君は登れないのかい?」とクライマーのヒエラルキーを作るようなクライマーが沢山います。確かに、ジムの課題をコンペのように競い合って登るのは良いかもしれません。が、本来は課題と向き合って登るべきなのです。

しかし、外岩のクライミングは人と競い合うものではないのです。それは「己と岩との対話」であり、時として「戦い」でもあるのです。そんなこと、多くの外岩クライマーはわかっていたはずなんです、当たり前のはずだったんです。

これは本来当たり前のことだったのですが、「ふと忘れてしまうこともある」のです。そんな人間の心の隙間に、チッピングの病魔、祟りはすっと入ってきて、少しづつ成長してゆくのです。そしていつか気づいたら、あの強かったクライマーが、チッピング犯という「祟り神」になっているのかもしれません。これは人間の弱みでもあるのです。


それが近年、ジムのコンペで上位に入るようなクライマーが、そのコンペの心積もりと同じように外岩にやってきて登っているような気がします。「あいつが三段落としたんだから、俺も三段くらい登れるだろう」とか、「どっちが何トライで登れるか競ってやろう」とか、そんな「人と比べる登り」をしているような気がします。

でも、本当の強いクライマーはそういったクライミングをしません。
人それぞれ、得意・不得意があることをわかっています。
そして、人と競い合うクライミングがいかに無味乾燥なものかを分かっています。


向かい合うべきもの、それは「己」と「岩」だけなのです。
そこに「他人」が入る隙間は一切ありません。その真の強さが、時として高グレード踏破として現れてくるのです)

人と競い合わず、「己と戦っているクライマー」が本当に強いクライマーなのです。
それは高グレードを登ることでもありません。


外岩クライミングで人と競い、一位になる必要はないのです。上には上がいます。それは単なる「小岩の大将」でしかありません。

そうではなくて、いかに唯一になれるかを考えたほうが良いでしょう。あなたと、その岩との対話の時間、それをもっと大切にするべきですそれは、あなただけが持つことのできる、唯一の時間なのです。

そして、岩場は世界各所にあります。本当に強いクライマーになりたいのであれば、遠征して、様々な場所で、様々なスタイル、岩質を登ってみると良いでしょう。

外岩では、3段を登れるクライマーでも登れない1級があるのです。
外岩とはそういうものなのです。岩とどれだけ真剣に対話できたか、
それで登れるか登れないか変わってきます。

「岩の道は、1日にしてならず」です。
これからも続いてゆくであろう、何十年という長いクライミング人生をもっと楽しんでいこうではありませんか。

クライミング後に旨い酒は飲めてますか?
旨い食事はできてますか?

旨い酒飲んで、旨い食事しながら、美味しいクライミングしようぜ。ただそれだけです。

タモリの名言を借りるなら、
「仕事じゃねえんだよ、遊びなんだから真面目にやれよ!」
No more Chipping, Enjoy Climbing!